2013.08.12

被災者の思い舞台に凝縮 倉本聰さん作 富良野で上演開始

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倉本聰さん率いる劇団の新作劇「夜想曲―ノクターン」の初日舞台に立つ出演者ら=10日午後、北海道富良野市の富良野演劇工場

 脚本家倉本聰さんが東京電力福島第一原発事故の避難区域を舞台に創作した劇「夜想曲-ノクターン」の上演は10日、北海道富良野市の「富良野演劇工場」で始まった。被災者の苦しみや怒りを表現し、犠牲者の霊を弔う内容の物語が大勢の観客の心を打った。
 南相馬市周辺をイメージした作品で、津波で2人の娘を失った男性が避難区域で生活を続ける彫刻家の女性と出会う場面から始まる。互いの体験を話すうち、女性が作ったピエロの彫刻が県民の思いを代弁するかのように語り出す。南相馬市の詩人若松丈太郎さんの詩も引用している。
 倉本さんは本県をはじめ東北の被災地を何度も訪れ、住民と交流を重ねてきた。チェルノブイリ原発事故を題材にした約20年前の若松さんの詩が、まるで福島の現状を予言しているかのようであったことに衝撃を受け、脚本に織り込んだ。
 約300の座席は満席で、幕が閉じると数分間にわたって感動の拍手が鳴り響いた。涙を浮かべている人もいた。倉本さんは「感無量。(震災と原発事故を)忘れてしまうことに少しでもストップをかけることができればと思う」と話した。
 公演は12日まで。再来年に被災地での公演も検討している。
 会場には、南相馬市小高区から原発事故後に富良野市に移住した中里範忠さん(75)、成子さん(72)夫妻が駆け付けた。
 範忠さんは双葉町、成子さんは浪江町の出身で、原発事故で自宅を追われ、県外で避難生活を送っていた。「いつか帰れる日まで」との思いを胸に今年4月、富良野に来た。
 新しい家は偶然にも会場のすぐそば。しかも詩が劇に取り上げられた若松丈太郎さんとは旧知の仲だ。縁を感じ、一般公開された舞台の稽古に毎日のように通ったという。
 2人は観劇を終え、ロビーで倉本聰さんに感想を伝えた。範忠さんは「私たちが口には出せない悲しみが表現されていた。被災者代表のつもりで見入った」と語った。

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