仙台弁護士会は書籍「3.11と弁護士 震災ADRの900日」を出版した。東日本大震災で生じたトラブルの解決を目指して同会が運営する「震災ADR(裁判外紛争解決手続き)」について詳述。解決した事例や仲裁人の弁護士の談話などを紹介し、生きた教材となっている。
解決事例は賃貸借や労働関係、津波被害など六つのテーマ別に計約40件を載せた。論点は「地震で借家の内部が破損した場合、生活上の不便を負担するのは貸主か借り主か」「津波で死亡した従業員への経営者遺族の償いの方法は何か」など多岐にわたる。
仲裁人の弁護士は「申立人と相手方の双方に主張の不利な点を認識させた。訴訟に突入すれば時間的、金銭的に負担が大きいことを説得した」「ともに被災者という観点から早期かつ円満な解決を図れた」などと記す。
震災ADRの運営データも収めた。ことし6月末現在、申し立ては499件あり、解決率は約6割に上った。申し立てから終了までの期間は平均約2カ月で通常の民事訴訟より短い。
仙台弁護士会は震災前の2006年、独自のADR機関「紛争解決支援センター」を設立。年間100件前後の申し立てを受理し、和解に導いてきた。こうした実績を基礎に震災ADRを通じて被災者らへの対応に当たった。
震災当時、支援センターの事務局長だった阿部弘樹弁護士は「震災ADRは震災後に早期に発足し、申し立てをしやすくし、争いの受け皿になった。書籍を今後の大災害時の参考にしてほしい」と望む。A5判、200ページで2000円(税別)。全国の書店で販売中。連絡先はきんざい03(3358)2891。
[震災ADR] 2011年4月開設。紛争の当事者の一方が申し立てをし、相手側が応じると審理が始まる。仲裁人の弁護士が双方の言い分を聞き、和解の道筋を探る。申立手数料は無料。和解が成立した場合の手数料は、解決金10万~100万円のケースで解決金の約4%。双方が半分ずつ仙台弁護士会の紛争解決支援センターに納付する。
2013年10月25日河北新報朝刊
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