2014.01.13

宮城・石巻の避難道に暗雲 事業費38億円が調査で73億円

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 東日本大震災を教訓に宮城県石巻市が計画する避難道路の整備が、正念場を迎えている。防災面で欠かせないと主張する市に対し、国はコスト面で厳しい姿勢を崩していない。住民は津波の悲劇を踏まえ「犠牲者を再び出さないためにも必要」と訴えている。
「事業費が73億円に増えている。そういう状況での事業継続は難しい」。復興交付金第7次申請に先立つ昨年9月のヒアリング。復興庁の担当者は市の避難道路計画に難色を示した。
 対象の道路は全長約3.5キロの渡波稲井線(仮称)。渡波地区の国道398号から牧山をトンネルで通り、内陸部の稲井地区までつなぐ。市は2018年度の完成を目指している。
 震災時、渡波地区では渋滞が多発。高さ2メートル前後の津波で多くの犠牲者が出た。内陸に通じる道路が近隣にないことが要因の一つとされ、市は避難道路の整備方針を復興基本計画に盛り込んだ。
 関係者によると、市は当初、地盤の固さを予測していたが、復興庁の提案で「軟らかい地盤」の想定で概算事業費を38億円と圧縮。12年の第3次と第4次の復興交付金で計約19億円が配分された。その後の調査で地盤が固いと分かり、市は事業費を73億円に見直した。
 第7次申請で市は約14億円を求めたが、昨年11月に決まった配分では一切認められなかった。復興庁はヒアリング段階の「事業費が38億円だから配分した。その範囲で続けるか、コストを圧縮するか工夫が必要」との立場を変えなかった。
 市によると、市街地で計画する主な避難道路7路線のうち、渡波稲井線を含め3路線で整備のめどが立っていない。
 特に渡波稲井線は新年度の着工を見込んでいる。近く予定される第8次申請が事業の先行きを大きく左右し、市基盤整備課の担当者は「断念はあり得ない。必要性と費用根拠に関する説明を続けたい」と強調する。
 渡波地区などの住民有志は12年8月、渡波稲井線の早期実現に向け、1万3000人を超える署名を市に提出。昨年10月には「精神的な不安の払拭(ふっしょく)には整備が不可欠」と要望書も出した。
 署名活動などの発起人会事務局長を務める阿部憲一さん(65)は「人口が減った地域を国は見捨てるのか。目の前は山で逃げる所がない。自主的に避難できる道を造ってほしい」と望んでいる。
 復興庁は「事業の費用対効果を考えなければいけない。課題を突き合わせながら、市と相談したい」と説明している。
 ◎避難道整備、被災5市町が国に要望へ
 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻、気仙沼、東松島、女川、南三陸の5市町でつくる県東部沿岸大規模被災市町連携会議は15日、避難道路の整備促進など復興事業へのさらなる支援を求めるため、国に要望書を提出する。
 主な要望は避難道路整備のほか、2015年度に期限を迎える復興交付金の継続や、仮設住宅集約に伴う仮設住宅間の移転費支援など計5項目。各自治体の首長と議長らが復興庁や国土交通省などを訪れ、要望する。

2014年01月10日河北新報朝刊

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