東日本大震災の津波を間一髪で逃れた双発のプロペラ機が宮崎空港(宮崎市)で展示され、来場者の人気を集めている。機体は航空大学校仙台分校(岩沼市)で訓練に使われていたビーチクラフトC90A。パイロットを目指す子どもに夢を与えながら、被災地から離れた宮崎で震災を伝えている。
旅客ターミナル屋上の展望デッキに設けられた展示スペースには平日の10月29日も、親子連れが足を運んだ。子どもたちは貸し出されるパイロットの制服を身に着け、コックピットに乗り込んだ。
休日になると「子どもパイロット」は200人を超える。全長約11メートル、全幅約15メートル、全高約4メートルの機体は存在感を放ち、周囲では歓声が絶えない。
長男と次男を連れて訪れた宮崎県日向市の内山昇治郎さん(38)は「展示を見て初めて、震災発生直後にこの飛行機が直面した危機を知った。訓練中の学生は当時、どんな思いで上昇したのだろうか」と思いをはせた。
同機は1987年12月に導入され、2012年3月に退役。震災発生時は訓練飛行中で、着陸体勢に入ったところで「ゴーアラウンド」(上昇指示)の緊急連絡を受け、地震と津波を免れた。
仙台分校は訓練機10機のうち、津波で7機を失った。このC90Aを含む残り3機は福島、新潟の両空港に避難した後、教官や学生、整備士とともに宮崎市の航空大本校に移り、訓練を再開した。
ターミナルを運営する宮崎空港ビルは、以前から訓練機の展示を検討。退役した同機を無償で譲り受け、12年7月に公開を始めた。傍らには、展示までの経緯を紹介するパネルも設置した。
同社総務部の藤本誠一副部長(47)は「宮崎に震災を伝えるものは、ほとんどない。仙台との結び付きを示し、震災を記憶にとどめてもらいたい」と説明する。
2014年11月05日河北新報
*****************
「読む」復興支援 スマイルニュース
iPhoneアプリDLはこちら
AndroidアプリDLはこちら
スマイルとうほくプロジェクト公式サイト