2015.05.12

風化懸念 首都圏で個展 石巻出身の写真家

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写真が発するメッセージを通して被災地再生を後押ししようと思いを語る川島さん=横浜市

 二科会写真部会友で石巻市出身の写真家、川島あつ子さん(75)=横浜市=は、再生への長い道のりを歩む故郷に思いを寄せ、写真を撮り続ける。東日本大震災以前の光景、被災の惨状、よみがえろうと立ち上がる地域-。被災地を映し出す三つのアプローチからの写真を組み合わせ、震災を風化させまいと横浜や東京発の問い掛けを発信する。

 震災から丸4年を迎えた3月上旬から中旬にかけ、川島さんは東京都内で、震災をテーマにした写真展を開いた。題して「未来に羽ばたく」。再生に向かう被災地の息遣いを、飛び立つ鳥に例えた。

 約50枚の展示作品のうち、震災から間もない時期に撮影した惨状が生々しい写真は3分の1程度。残り3分の2は、震災前に撮りためたものと震災後に撮り続けているものを、半数ずつ紹介した。

 震災前の写真は「猫の島」として知られる石巻市の田代島でライフワークのように撮ってきた写真。風情ある漁村の光景を伝える。

 震災後に追い続けている被写体は、壊滅的に被災した石巻市雄勝町で再生への心の支えとなっている雄勝法印神楽。「雄勝の人々が力強く演じるこの神楽を震災後に初めて見た時、心にびんびん響く感動を覚えた」と川島さんは話す。

 震災をキーワードにした自らの写真展は今回が初めて。「作品を発表するために撮ってきたわけではない」ことが、大きな理由だ。

 だが横浜で暮らし、被災地は復興がどんどん進んでいると思われているかのような周囲の捉え方に疑問を感じた。震災前と今をつなぐ写真を撮り続けてきた自分なりの問い掛けをしたいと、写真展を思い立った。

 手織り物教室を主宰する傍ら、写真家としての活動に力を注ぐ。手織りを通した被災地支援活動もしている。

 「今後も被災地にずっと目を向け、震災を風化させないための一助となっていきたい」と語る。

河北新報2015年05月11日

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